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「獸の街に掟はない」
萩原秀夫
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使用テキスト：豊書房 刊（Ｓ３５／１２：初版本）
レビュー
新宿の深夜バーで、暴力団桜井組の幹部二人に絡まれていた後藤奈美子を救った謎の男性！ 彼の名は北信也、どうやらこの新宿界隈で何かを探っているらしいのだが、好奇心丸出しの美奈子の追及にも動ぜず、決してその目的を喋ろうとはしない。北にのされた桜井組の幹部二人も彼の身辺を探るが、深夜バーのバーテン２人も初めて見る顔だと証言し、北の正体は謎に包まれたままであった。
一方、その桜井組の作った学生専用のクラブ、ユニバーシティ・クラブに入り浸り、夜通し遊び歩いている女子高生があった。彼女の名前は池田清子、背伸びして夜遊びなどをしているが、まだまだ世間の怖さを知らない彼女に次々と貞操の危機（笑）が降りかかる。まず最初は桜井組の参謀、玉井。二人の後をつけていった北によって危ういところを救われた清子だったが、またしてもだまされ今度は組のパトロンである、ある「大物」の相手をさせられることに。しかしここでも持ち前の度胸で危ういところを逃げ出した清子、行きがけの駄賃とばかりに「大物」の財布を失敬したのだがこれがいけなかった。財布の中には「大物」の名刺が入っており、これがばらまかれれば「大物」は身の破滅となるのである。「何としても清子を捕らえろ！」と、配下の桜井組に檄を飛ばす「大物」。そして「ユニバーシティ・クラブ」に不信を抱き、動き出す桜井組の対抗組織である「遊佐興業」。果たして清子の運命は？ そして北の正体と目的とはいったいなんなのであろうか・・・・・・。
感想
対立する組織、謎の男の登場、そしてこの題名とくれば、誰だって獸の街「新宿」を舞台にハメット「赤い収穫」ばりの血で血を洗う死闘が繰り広げられると思うでしょう？ ところがこれ、全然そんな話じゃなかったんですわ。桜井組は清子に振り回されるだけですし、「遊佐興業」の皆さんはろくに登場しないうちに警察に全員捕まってしまう。謎の男、北にいたってはほとんど何にもしないで美奈子嬢とデートをしているだけですし。ではこの物語の核となっているのはいったい何かというと、これが「エロ描写」なんですわ。クラブ会員の女子大生はみんなのいる前でスカートをめくりだすわ清子ちゃんは３回も裸にされるわと、読者サービスてんこもりです（笑）。なんか、他の描写はあっさりとしているのに、エロエロ場面になるととたんにねちっこくなるんですな。もっと他に説明することがあるだろう、萩原！ と思わず突っ込みを入れたくなってしまいました。あれだけ保身に躍起となっていた「大物」が、残り２ページで急に改心してしまったり、なんともご都合主義的な人物関係が突然判明したりと結末も安易。読後に脱力感に襲われること間違いなしの代物でありました。あ、そうそう、清子ちゃん、セーラー服のまま夜遊びするのは捕まっちゃうから止めようね。
採点（５点満点）
ゲテ度：２．０点
ミステリ度：０．５点
トホホ度：４．０点
萩原秀夫
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使用テキスト：豊書房 刊（Ｓ３５／１０：初版本）
（カバ欠本）
レビュー
深夜、都立大裏門付近の路上で女性の刺殺死体が発見された。運良くいた目撃者の証言によると、女性の死体はどうやら車に乗せられてここに運ばれてきたらしい。年齢は３０歳前後、着衣に乱れはなかったものの下着を着けていなかった。このことから当初は通り魔の犯行とも思われたこの事件だが、司法解剖の結果、被害者に暴行の形跡はなく、捜査の陣頭指揮を執ることになった天海警部らは、痴情のもつれとの線で捜査を進めるのであった。
そんななか、犯人に復讐を誓いながら、被害者である姉、飯塚由美子の遺品整理をしていた弟の富夫は、姉が一介のＯＬとしては不相応な５００万円もの遺産を残していたのを知る。またそれとは別に、富夫の仕事上の上司である杉山にもどこのものともわからない謎の鍵を預けていたらしい。５００万円の遺産と謎の「鍵」、ここに姉殺害の秘密が隠されていると考えた富夫であったが、あるトラブルに巻き込まれた際にその鍵を紛失、さらに姉が残してくれた５００万円の証書まで何者かに盗まれてしまう。途方にくれた富夫は全てを警察に話すべく、天海警部の元を訪れるのであった。一方、これを聞いて色めき立ったのが捜査陣。早速証書に記入されていた銀行を調べてみるが、すでに５００万円は引き出されたあと、鍵のほうも同じ銀行の貸し金庫の鍵と判明したがこちらも中身は持ち去られたあとであった。そして鍵を預かっていた杉山と、富夫がトラブルに巻き込まれた際に一緒にいた彼のガールフレンド、光岡久里子が揃って謎の失踪を遂げていたのである。果たして由美子を殺したのはいったい誰か？ 「悪魔」はどこに潜んでいるのだろうか・・・・・・。
感想
今回も萩原を読んでみました。「トホホ・・・・」だった「獣の街」と比べてどうだったかというと・・・・・ 実はこれ、１／３くらいまではなかなか良かったんですよね。プロと素人の捜査合戦というのは現代のミステリでも良く使われる手法ですし。ところが中盤、暴力団がうろうろし始めるあたりから怪しくなってきました。どうもこの人、筋に暴力団を絡ませるのが好きらしいのですが、そういう組織を持ち出しちゃ興ざめってもんです（まあこれが貸本スリラーの常套手段なのかもしれませんが）。そして最後に暴かれた真犯人は掟破りの反則技間違いなしの代物。しかもその解明の仕方が安易で安易で（笑）。あと気になった点がひとつ。萩原という人は、どこかで前職は警視庁の警部だったと聞いたことがありましたが、ほんとに警察関係の方だったのでしょうか？ あんたが書くほど警察は間抜けじゃないと思うぞぉ。でもまぁ、前作よりは楽しめましたかね。ちなみに今回はエロ描写はまったくといっていいほどありませんでした（笑）。
採点（５点満点）
ゲテ度：２．０点
ミステリ度：３．０点
トホホ度：３．０点